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VMD用語事典


V M D 用語事典の刊行

ビジュアルマーチャンダイジングという概念が日本に導入されたのは1970年代、今から30年以上前になります。1980年代には百貨店を中心に「見やすく、手にとりやすく、買いやすい売り場作り」を目標としたVMDによるストアオペレ-ション戦略が取り入れられ、そこから派生したVMDマニュアル作成や、VP・PP・IPを始めとするVMD用語の普及により、VMDが着実に浸透していきました。1990年代になると、海外アパレル企業やブランドの進出などに刺激を受けながら、マーケティングやマーチャンダイジングの概念に基づいた本格的なVMDの普及の時代を迎えました。

そのような時代背景のなか、1987年4月に日本ビジュアルマーチャンダイジング協会が創設されました。1989年、協会は創立時から急務とされた「VMDの定義」を発表する一方、もう一つの急務であったVMD業界初の用語事典の出版計画について、同年、教育委員会を中心に実行委員会を立ち上げました。この事典の意図は、百科事典と百科辞典の差異について留意し、辞典のような語釈に留まらず専門家と専門分野に関わる人に向けて実用と実務を重視したコンテンツとして目論まれ、入手しやすい書籍を目指し演繹を重ねて決定されました。編集委員に加えて多くの協会員が参加し、当時の教育委員長である花見保次編集委員長のリーダーシップのもと、用語の収集と検討、収録用語の絞り込み、解説文章の作成などに多くの時間を積み重ねました。着手してから5年5ヶ月の歳月、150回を超える編集会議と80名以上の協会員の献身的な編纂作業の結果、1995年、協会創立8周年を記念して、VMD用語事典は刊行されました。

 初版の刊行に対して、八鳥治久氏、古畑多喜雄氏、後藤艶子氏から寄せられたメッセージ(初版に掲載)を以下に収録いたします。



「刊行の言葉」 日本ビジュアルマーチャンダイジング協会 理事長 八鳥治久 
          

ビジュアルマーチャンダイジングは、アメリカで生まれ、アメリカで育った考え方である。それだけに、そこには多くの外来語が関係している。

また、ビジュアルマーチャンダイジングは、商いのすべてにかかわるものである。それだけに、商いに関する多くの専門用語も関係している。

いや、それだけではない。アートやファッション、建築や照明といった分野の専門用語も、さまざまなかたちでかかわっている。

これらの外来語と専門用語とを理解することは、あらゆることに優先しなければならない。なぜなら、言葉の解釈に違いがあっては、正確な意思の伝達は成立しないからである。また、言葉の理解が曖昧であっては、真実をつかむことができないからである。

この用語集には約1,200語が集められている。関係すると思われる言葉を網羅したつもりだが、欠けているものがあるかもしれない。また、その解釈に異論のある方がいるかも知れない。その点についてのご指摘を期待している。

言葉は生き物である。時代とともに発生し、変化し、進化し、消滅する。この用語集は、その生きているものを、1995年の時点でとらえたものである。これらを、またある時点でとらえ直してみる必要があるだろう。

この用語集の刊行は、日本ビジュアルマーチャンダイジング協会の創立8周年を記念して行うものである。編纂には花見保次副理事長と協会の教育委員会が中心になってメンバー62人があたった。要した日数は5年5カ月、合同編集会議は150回を超えている。一つひとつの言葉に、一人ひとりが持っている知識と知恵と情熱を傾けた、まさに手作りの用語集である。その労に対して、ここに深く敬意を表したいと思う。

 

 

「刊行に対し私の望むこと」 日本ビジュアルマーチャンダイジング協会 評議員 古畑多喜雄

かつてVMDに対する論議が盛んに行われていた。今でも発言の角度によって微妙な解釈の相違を感じる。いずれにせよVMDがマーチャンダイジングの視覚化であり、視覚に訴える販売戦略であるなら

その発想を店頭に展開させるとディスプレイとなり、通販のカタログに印刷されるとグラフィックの分野となる。つまりVMDを形に定着させるとデザインになるということだ。

ディスプレイデザインは<主題を伝達させるための空間演出>であり、企業のもつイメージや商品をもっとも効果的に見せるテクニックでもある。いまどきディスプレイがたんなる装飾・陳列のことだと考えている人がいるとは思わないが、この機会にVMDとディスプレイ、VPとの交錯のなかで、共通の理論と概念を確かめあうべきではないだろうか。

まず、VMDにかかわる基本的な知識と、すべての領域がクロスオーバーしているなかで何をピックアップし、それをどうつなげるかから始めなければならない。

また、VMDに関するセミナーやコンサルテーション、店づくりの本などにみられる死語に近い言葉、一般的でない造語なども軌道修正することも必要だ。

VMD用語事典の刊行が数年前から計画され今日まで遅れた要因は、それらの適確な抽出、分かりやすい解説とその整理にあったと思うが、ここまでまとめあげた花見保次編集委員長を始め各委員の情熱とエネルギーを高く評価したい。



「刊行に対し思うこと」 日本ビジュアルマーチャンダイジング協会 評議員 後藤艶子

VMDの一端をビジネスとする私にとって、言葉(専門用語)がいかに大切であるか常に痛感するところです。近年は店舗演出において、VMDは必然的なものとして重要視されるようになってきました。一般知識としては業界においても曖昧な部分が多く、各個人の知識と見解によるところがありましたが、本書の発刊によって社会的に広がるであろうと大いに期待されます。

VMD戦略は、次々と移り変わる時代の価値観を俊敏にとらえるその感性が重視されることから、<新語>、<造語>の類が多く生まれるのは当然のことです。従来よりこの業界は大米に学ぶことが多く、カタカナ用語が非常に多くなっているようですが、一般辞書では解決しない用語がこの本書によって統一され明確にされることは成人式にも似た感慨深いものがあります。

VMDの専門用語は商品装飾展示技術用語の一部分以外は、他の分野で確率した用語を多く活用されていますが、基礎知識・関連知識を含めると数限りなく広範囲になり、発刊に至るまでには収集・構成・編集は容易なものではなかったと想像されますが、さいわい、本書の執筆および編集の協会の教育委員会は、その殆どが教育者・指導者の立場にあると共に永年この業界の第一線で活躍しており、日本のVMDの実践的な推進者であり、開拓者でもありますが、その豊富な現場経験を生かした業務観点での常識判断でVMDに関する基本用語、更に使用頻度の多い用語を抽出し、大勢の見識を改めて見直し、長い年月をかけて討議を重ねて練り上げた本書は、きっと皆様のVMD現場にそしてこれからこの道を志す人にとって、直ぐに役に立つ実用的な座右書として重宝していただけるものと確信いたしております。

 

VMD用語事典 改訂の歴史

上記の八鳥理事長(当時)のメッセージにもあるとおり、「言葉は生き物である。時代とともに発生し、変化し、進化し、消滅する。」という宿命がある以上、用語事典の定期的な改訂と更新は重要な作業です。

初版上梓後、2004年の部分改訂版、2008年の協会創立20周年記念改訂版を経て、2016年11月には改訂最新版を刊行しました。初版から20年以上経過する間に、デジタル化、グローバル化が世界的に進展し、社会の様相は著しく変化しました。VMD用語事典・最新改訂版では、速度を増す時代の変化に合わせ、既存用語の削除、解説文の見直し、新用語の増補、イラストの変更などを大規模に実施し、収録用語とその解釈を最新の状態にアップデートしました。併せて表紙デザインもリニューアルし、イメージを一新させました。改訂版編集作業は、メールでのやりとりを基本として進行、各フェーズの要所では意見交換のために集合し、プロジェクトチーム発足から約1年で完成の運びとなりました。

 

VMDの進化とVMD用語事典のこれから

1990年代以降、海外SPA企業、ラグジュアリーブランド、ファストファッションの進出や、国内SPA企業の台頭などが契機となり、「VMDはマーケティングの一環であり、マーチャンダイジングに基づいて行われる企業戦略活動である」とする考え方が従来の概念に加わり、情報技術の革新も相まって、VMDはさらに進化しています。

近年は、インターネットやスマートフォン、SNSの普及により、オムニチャネルという利便性の高い購買環境が構築され、顧客の購買行動が劇的に変化したことにより、VMDの概念も変化しています。VMDは、リアルショップだけではなくオンラインショップにおいても重要であり、今後は用語事典もまた、バーチャルな世界への対応も含め進化し続けていく必要がある、と日々実感しています。 

 

改訂最新版用語事典に収録された約1300語は、VMDに携わるビジュアルマーチャンダイザー、VMD担当者、デコレーター、販売促進担当者、販売員などの方々に必要なVMDに関わる知識と、MP技術に関する用語を網羅しています。また一方では、VMDに関わる技術・技能の伝承、研究および能力開発や人材育成という見地から当協会が支援協力する、ビジュアルマーチャンダイザーのための国家資格・厚生労働省「商品装飾展示技能検定」の受検者向け参考書としての役割も果たしています。

この事典がVMDに関わるすべての方々、そしてVMDとVMD界の今後の発展に寄与することができますよう祈念いたします。

(田代悦子)


日本ビジュアルマーチャンダイジング協会
VMD用語事典 初版、改訂版、改訂最新版 編集委員及び執筆協力者

●初版編集委員長      花見保次
●改訂版~最新版編集委員長 田代悦子
●初版監修担当       古畑多喜雄、八鳥治久、後藤艶子、宮崎倉治、佐藤昭年
●改訂版編集統括      小田切純子、福田ひろひで
●初版~改訂最新版編集委員 朝比奈保、池谷光江、小田切純子、楫 義明、甲田祐三、小林 敦、
              河野聡子、早乙女喜栄子、佐藤昭年、佐々木勇、鈴木邦嗣、志田茂子、高野文代、高畠友枝、
              田代悦子、田口早苗、中込美津子、中本英一、平山安芸子、福田ひろひで、橋本由起子、武藤豊子
● 初版~改訂最新版編集及び執筆協力
              池谷光江、石井潔、楫義明、家老正俊、小林良子、佐藤昭年、田口早苗
              立木定彦、田淵義彦、出口元、中村肇、袴田薫生、藤原雅夫、前田記代子、松島公嗣、米本進次
             (株)日本木材総合情報センター・木のなんでも教室
              日本フォーマルウェア協会
●初版~改訂最新版資料協力 (株)アルス、(石浜寿根、株)グリーンディスプレイ、(株)東光園、
              (株)七彩、日本インドアグリーン協会、(株)フラワーゲート、
              (株)ヤマトマネキン、(株)ローザ

●初版表紙デザイン     藤瀬和敏
●改訂版表紙デザイン    亀井優希
●改訂最新版表紙デザイン  小林敦 
●初版イラスト       多田喜芳、大橋良司
●改訂〜最新版イラスト    石川絵麻、小林敦
●初版執筆者         浅川弘子、石橋敦二、井戸和夫、井上太久哉、妹背敬典、大島厚子
              大谷悦子、大谷正人、岡崎 俊、岡崎純子、岡田洋子、荻野智恵子
              小田切純子、尾畑純司、楫 義明、片岡 裕、川崎安子、菅留利子
              木内勢津子、木下宏昭、木下雅博、金 孝根、小泉純司、甲田祐三
              小塚典子、小出川忠、早乙女喜栄子、荘原陽子、滋野哲彦、志田茂子
              島村黎子、白井正男、城 守臣、鈴木純子、鈴木哲男、高島 勲
              高野文代、高橋珠美、高畠友枝、田口早苗、田代悦子、田中寛志
              中村勇次郎、中村由紀子、中本英一、長尾知可子、長沢康雄、野村吉雄
              橋本由起子、福田ひろひで、布施 洋、前田典子、松田明子、松村 緑
              村上幸三郎、森 豪男、山口雅一、山田節子、山田千恵、山根猛生
              吉澤正気、吉田博文、その他協会員