1988年に日本ビジュアルマーチャンダイジング協会は、ビジュアルマーチャンダイジングを次のように定義しました。
「ビジュアルマーチャンダイジングとは文字どおりマーチャンダイジングの視覚化である。それは企業の独自性を表わし、他企業との差異化をもたらすために、流通の場で商品をはじめすべての視覚的要素を演出し管理する活動である。この活動の基礎になるものがマーチャンダイジングであり、それは企業理念に基づいて決定される。」
※ビジュアルマーチャンダイジングは英語圏ではVMと略されていますが、日本ではVMDが用いられています。
1944年、アメリカのディスプレイ会社のアルバート・ブリス氏が初めてこの言葉を使用したといわれています。その後70年代のアメリカで、市場競争の激化、優秀な販売員の不足などにより、商品を提供する側が主体となったマーチャンダイジング活動だけでは、もはや顧客の購買意欲を喚起できなくなったために、店舗における商品プレゼンテーションの重要性が高まり、それがVMDというストアオペレーション戦略の誕生につながったとされます。同じく70年代には日本にもVMDが本格的に導入され、浸透してきました。
一方、20世紀にアメリカでうまれ、近年急速に発展したマーケティングという概念があります。マーチャンダイジングがマーケティングの諸機能のひとつであることから、VMDもまた、マーケティングに含まれる概念であるといえます。
VMDとは顧客の立場にたち、マーチャンダイジングを視覚伝達することにより、見やすく、選びやすく、買いやすい快適な売場環境を提供する仕組みと方法のことをいい、マーケティングの一環として行われる企業戦略活動です。
また、VMDは企業やブランドの価値向上に向けた経営戦略活動のひとつとして位置づけられます。企業やブランドの環境・商品・情報などの視覚的要素をコントロールし、その世界観を店舗というメディアで表現することにより、企業の独自性を高めます。
ビジュアルマーチャンダイジングの概念は、時代とともに変化しています。近年、インターネットやスマートフォン、SNSの普及により消費者行動は著しく変化を遂げ、オムニチャネルという利便性の高い購買環境が構築されたことにより、顧客がいつでもどこからでも商品を購入できるようになりました。VMDの概念は、リアル店舗だけではなくバーチャル店舗においても重要であり、オムニチャネルに対応するVMDが今、求められています。
マーケティングの一環として、VMDの考え方をもとに、マーチャンダイジングを的確に視覚伝達することをマーチャンダイズプレゼンテーション(MP)といいます。
五感のうち、なぜ視覚に訴求することが重要かというと、人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)は視覚が優先され、80%以上もの外的情報を脳に送り,記憶しているといわれているからです。
マーチャンダイズプレゼンテーションとは、マーチャンダイジング全体や商品そのものを見やすく、わかりやすく、選びやすく、しかも魅力的に見せることです。その表現方法として、次にあげるビジュアルプレゼンテーション(VP)、ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション(PP)、アイテムプレゼンテーション(IP)の3種類があります。
マーチャンダイジング(商品政策や商品計画)を明確に視覚伝達するために、ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)に関する知識とVMD計画に基づき、感性と、商品を見せる技術(MP)を融合・駆使して、商品を効果的に陳列・演出・表現し、お客様に快適な買い物を提供する魅力ある店づくり・売り場演出をする仕事です。
その代表的な職業としてビジュアルマーチャンダイザーがあります。
VMDコーディネーター、VMDディレクター、VMDコンサルタント、VMDデザイナー、ビジュアルコーディネーター、ディスプレイデコレーター、ショップスタイリストなど、欧米の専門家の呼称のほかに、日本で生まれたものもあります。
日本ビジュアルマーチャンダイジング協会が支援をする「商品装飾展示技能検定」は、VMDの考え方をもとにマーチャンダイズプレゼンテーションを担当するスペシャリストの技能・知識を一定の基準によって検定し公証する国家検定で、1986年から労働省(当時)が実施し、現在では厚生労働省が毎年実施しています。
この技能検定は試験の難易度によって1級、2級、3級に区分され、実技試験と学科試験により実施されます。両方の試験に合格した人には、1級は厚生労働省大臣名の、2級・3級は東京都知事名の合格証書と技能士章が交付され、「技能士」と称することができます。