ファッションの新しいビジネスモデルが次々に生まれ、年代によって小売業界の主要なプレイヤーが交代してきた30年を振りかえると、背景には経済状況の推移がみえてきます。経済動向によって生活者の購買行動も当然変化しますが、どのような状況下でもお客さまにとって見やすく・分かりやすく・選びやすい売場をつくり、価値の提供を担うのがVMDの役目でしょう。今後、スマホ片手にSNSで情報を受け取りながら買い物をするお客さまとともに、売場づくりも大きく変化していくことでしょう。
60年代にアメリカで生まれたVMDは70年代に、日本に上陸しました。 それまで商品の演出、提示、陳列は主にディスプレイ(display)という言葉で括られていました。
70年代後半のVMDに於いて、ディスプレイはマーチャンダイジングの一部と位置づけられ、演出(VP)、提示(PP)と陳列(IP)の区別に繋がっていきます。
日本では、百貨店がVMDの概念を取り入れ、見やすく・分かりやすく・選びやすい売り場の基本をつくりました。
1970年代 西武百貨店渋谷店(写真1)
1970年代 西武百貨店渋谷店(写真2)
1980年代 伊勢丹新宿本店(写真3)
1980年代 三越百貨店銀座店(写真4)
1990年代 伊勢丹新宿本店(写真5)
1990年代 三越百貨店銀座店(写真6)
1990年代 伊勢丹新宿本店(写真7)
2000年代 伊勢丹新宿本店(写真8)
2000年代 伊勢丹新宿本店(写真9)
2010年代 H&M新宿店(写真10)
2010年代 H&M新宿店(写真11)
21世紀に入ると生活スタイルの提案が重要な要素となり、多くの人へ向けた売場作りから、趣味や嗜好にこだわる人にターゲットを絞った商品構成と空間づくりとなり、生活における価値観や思想を軸にした独自の視点で商品をセレクトするライフスタイルショップの流れが生まれました。
アイテムは生活雑貨からインテリア、ファッション、食に至るまで幅が広く、そのひとつひとつがしっかりとした個性をもっている商品が多いのも特徴のひとつです。
ファッションとライフスタイルをミックスした「素敵な生き方提案」の空間は、その人の家に遊びにいったような空気感を醸し出す売場づくりになっています。
2016年 ラカグ(写真12)
今後、お客様一人一人の自己実現をお手伝いできる売り場作り が模索されるなかで、デジタルサイネージや動画での表現、 ECと連携した情報発信、アプリで商品情報が分かるようになる等、 大きな変化が予測されています。
【写真提供】
写真1. 有限会社 スタジオダヴィンチ(田代悦子)
写真2. 有限会社 スタジオダヴィンチ(田代悦子)
写真3. 株式会社 三越伊勢丹 (荒木淳一郎)
写真4. 株式会社 京屋 (長谷川千春)
写真5. 株式会社 三越伊勢丹 (荒木淳一郎)
写真6. 株式会社 京屋 (長谷川千春)
写真7. 株式会社 三越伊勢丹 (荒木淳一郎)
写真8. 株式会社 三越伊勢丹 (荒木淳一郎)
写真9. 株式会社 三越伊勢丹 (荒木淳一郎)
写真10. 有限会社 ワークベンチ (山本伊都子)
写真11. 有限会社 ワークベンチ (山本伊都子)
写真12. 株式会社 サザビーズリーグ (阿部隼也)